機能性ディスペプシア(FD)とは

定義(機能性ディスペプシア[FD])

慢性胃炎と診断される時に、3つのケースが存在します。1つ目は、胃内視鏡検査により粘膜傷害や血管透見所見が認められた時に、内視鏡的に「慢性胃炎」(内視鏡的胃炎)、2つ目は、組織生検により慢性的な炎症細胞の浸潤がみられた時に、病理組織学的に「慢性胃炎」(組織学的胃炎)、そして3つ目は、内視鏡的に明らかな器質的疾患が認められないにもかかわらず、患者が胃もたれ、胃痛、胸やけなど心窩部を中心とした症状を訴える場合に、臨床的に「慢性胃炎」(臨床的“胃炎”)と診断されています(図1)。日本における臨床的な慢性胃炎は、欧米ではfunctional dyspepsia(機能性ディスペプシア[FD])とされています。しかし、日本ではFDが保険診療病名として承認されていないため、慢性胃炎に位置付けられています。このように慢性胃炎という1つの病名に対して3つの概念が混在していることから、臨床で診断や治療が複雑となっているのが現状です。

FDの病態生理

FDの病因として、心理的ストレス要因と胃に対する物理化学的ストレスによる身体的要因の大きく2つの要因が考えられています。FDにおいてプラセボ効果が40~50%であったとの報告があることから1) 、FDの病因の中でも心理的要因の関与は少なくないと考えられます。

FDには、胃内容物排出能異常の主な病態として、①胃排出遅延と②適応性弛緩反応異常の消化管運動障害、③内臓知覚過敏が示唆されています(図2、3)。①胃排出遅延と②適応性弛緩反応異常の消化管運動障害、さらに③内臓知覚過敏が加わり、ディスペプシア症状が現れるといった相互に関連した病態が考えられています。

  1. 胃排出遅延:胃排出能は食物を消化して胃から十二指腸側に排出する能力で、食後の胃の運動機能であり、遠側胃の蠕動収縮力を反映すると考えられています。胃排出遅延は食後愁訴症候群との関連が推察されています。FD患者の約40%で胃排出遅延を認めたとの報告があります2)
  2. 適応性弛緩反応異常:適応性弛緩反応は、摂食により一定量以上の食物が胃内に入ると食物を受け入れるために近位胃が拡張する反応です。通常、胃内圧が下がって胃底部が弛緩することで、多くの食物が受け入れられます。しかし、適応性弛緩反応が障害されると、胃が拡張されず多くの食物を受け入れられないため、早期飽満感を惹き起こす可能性があります。早期飽満感を訴えるFD患者の約40%で適応性弛緩反応の低下がみられるとの報告があります3)
  3. 内臓知覚過敏:内臓知覚過敏は、食物による伸展刺激や酸による化学的刺激などを過剰に知覚する状態です。FD患者では近側胃、遠側胃や十二指腸の知覚過敏が影響して、ディスペプシア症状を惹き起こしている可能性が考えられています。上部消化管刺激に対する知覚過敏が認められます。食道電気刺激に対する誘発脳波潜時短縮、飲水試験や加圧試験での知覚閾値の低下、十二指腸酸性化による症状誘発などが報告され、末梢での知覚過敏と中枢での過大認知が考えられています。

FDは、心理的・社会的ストレスによって消化管運動障害と内臓知覚過敏を増悪させる可能性が示唆されているため、ディスペプシア症状と心理社会的要因が関係する中枢機能との関連性が推察されています(脳腸相関)。また、脳腸相関は神経免疫内分泌系の変化が介在すると考えられています。しかし、FDの病態や予後における中枢機能の役割や介在する生物学的鍵物質に関してはまだ明らかとされていません。

図2 FDにおける病態生理:脳腸相関
図3 FDの発生機序

〔文献〕
1)Veldhuyzen van Zanten SJ,et al.Am J Gastroenterol,91:660-673,1996
2)AO Quartero,et al.Dig Dis Sci,43:2028-2033,1998
3)J Tack,et al.Gastroenterology 115:1346-1352,1998

Mylan e Channelは、医療従事者向けの総合情報サイトです。

ご利用にあたっては以下の利用条件をご覧ください。
  • ご登録は医療機関にお勤めの医療従事者に限らせて頂きます。
  • 以下の場合、通知をすることなく会員資格の取り消しを行うことがございますのでご了承ください。
    1. 登録内容の変更において、医療機関にお勤めではなくなられた場合
    2. 登録内容に虚偽が判明した場合
    3. 会員の死亡、転出先不明、等により、弊社が合理的な通信手段を用いても会員ご本人と連絡がとれなくなった場合
  • その他、ご利用にあたっては利用規約が適用されるものとします。

会員の方

ログインIDとパスワードを入力し「ログイン」ボタンをクリックしてください。
※パスワードをお忘れの方はこちら

会員登録されていない方

医療関係者の方は、製品に関する情報や一部コンテンツをご利用いただけます。対象の職種をお選びください。
※医療関係者でない方はこちら