慢性便秘症とは

便秘の定義と慢性便秘症

便秘は、一般に排便回数や排便量が減少したり、残便感や腹部膨満感、腹部不快感、排便時の強いいきみなどの症状を呈した状態といえます。排便回数や排便量は個人差が大きいため、便秘を明確に定義することは困難といわれています。
排便回数の減少は腸管通過時間延長のため硬便になりますが、便秘の定義に便形状を一義的に用いることは多くありません。
慢性便秘症は、発症経過が慢性であり、上記のような便秘症状が長期間持続している、もしくは間欠的に1~2ヵ月にわたって持続している状態のことです。
機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders:FGIDs)に関する概念を整備したROME Ⅳ基準では、一過性の症状と区別するため、慢性の症状を「6ヵ月前から最近3ヵ月間で基準を満たす」と定義しています。

便秘と慢性便秘症の疫学

平成25年国民生活基礎調査による便秘の有訴者数は、人口1また、慢性便秘症に限定した疫学調査は日本では行われていませんが、前述の調査からは、便秘症と同様に慢性便秘症の患者も女性で多くみられ、加齢とともに男女ともに増加していると考えられます。

図1 年齢別の便秘有症状者の疫学

糞便の形成

経口摂取した食物は、小腸において栄養物の大部分が吸収され、結腸に送られます。結腸では水分が吸収され、糞便は固形化され、蠕動運動によりS状結腸に貯留し、排便運動により、排泄されます。通常、食物は経口摂取後24~72時間で排泄されます。

便秘の成因

便秘は、以下のような排便メカニズムに何らかの障害が起こることにより発症します(図2)。

  1. 食物は、摂取された後、まず、胃及び小腸で消化・吸収され、さらに大腸での水分吸収などにより徐々に便が形成され、大腸の蠕動運動により近位大腸から遠位大腸に移送されます。
  2. 次に、直腸に便が移動することにより、
  3. 直腸内圧の上昇、直腸壁の伸展が起こり、その伸展刺激は骨盤神経を介して脊髄の排便中枢に伝わると同時に、
  4. 大脳にも伝達され、便意を自覚します。
  5. 排便を意図すると、排便の指令は大脳から排便中枢、骨盤神経を介して、収縮していた内外の肛門括約筋を弛緩させ、腹筋の収縮(いきみ)により腹圧を上昇させ、
  6. 直腸から便が排出されます。
図2 排便メカニズム

便秘と慢性便秘症の症状

便秘を構成する症状は、「排便回数の減少」「排便量の減少」「残便感」「腹部膨満感」「腹部不快感」「排便時の強いいきみ」など多彩であり(表1)、多くの場合はこれらの症状が混在しています。排便回数の減少は、週に平均3回未満の状態をいいます。それ以外の症状を客観的に評価することは難しいのですが、ROME Ⅳ基準では、これらの症状を客観的に評価した機能性便秘の診断基準を提唱しています。
慢性便秘症ではこれらの症状が一過性ではなく長期間にわたります。「長期間」の定義は特に定められていませんが、ROME Ⅳ基準では、慢性の症状を「6ヵ月前から最近3ヵ月間で基準を満たす」と定義しています。

表1 便秘を構成する症状

便秘と慢性便秘症の分類と病態

便秘は、一般的に発症経過から急性と慢性に分けられ、さらに機能性、器質性、薬剤性、症候性に分類されます(図3)。慢性便秘症には、発症経過が慢性であるものがすべて含まれます。

図3 病態からみた便秘の分類

① 機能性便秘

機能性便秘は腸管に器質性の病変は認められませんが、胃結腸反射の低下や排便排出機能の障害などが原因で発症する便秘で、大腸通過遅延型(slow transit constipation)と排便機能障害型(outlet obstruction)に分類されます(図4)。大腸通過遅延型は、胃結腸反射の低下により大腸内あるいは全消化管通過時間が遅延していることにより発症します。また、排便機能障害型は、肛門括約筋の排出力低下や協調不全により便排出機能が障害され発症します。

図4 機能性便秘と病態

② 症候性便秘

症候性便秘は他の疾患が原因で発症する便秘で、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症など)、代謝性疾患(ポルフィリン症、低K血症など)、神経疾患(パーキンソン病、脳血管障害など)、精神疾患(うつ病、統合失調症)、循環器疾患(急性心不全、急性心筋梗塞)などで起こります(表2)。これらの疾患の多くは腸管運動機能が低下するために便秘を起こし、その原因は糖尿病では神経障害、甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌低下、低K血症では筋肉障害、神経系疾患では中枢神経系の障害と考えられます。

表2 症候性便秘を起こす疾患例

③ 薬剤性便秘

薬剤性便秘は腸管の運動を抑制する薬剤の影響により発症する便秘で、便秘を引き起こす薬剤には、抗コリン薬、ドパミン作動薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗がん薬、麻薬系鎮痛薬、降圧薬、抗不整脈薬、止痢薬などがあります(表3)。

表3 便秘を引き起こす薬剤

④ 器質性便秘

器質性便秘は、腸管や肛門が器質的疾患あるいは解剖学的な異常により狭窄や閉塞をきたしたことが原因で発症する便秘です。原因疾患としては、管腔の器質的閉塞、腸管壁の器質的障害あるいは蠕動運動障害、管腔外からの器質的圧迫に大別されます(表4)。管腔の器質的閉塞は大腸直腸腫瘍や炎症性腸疾患、腸管壁の器質的障害あるいは蠕動運動障害は全身性硬化症やHirschsprung病、パーキンソン病など、管腔外からの器質的圧迫は開腹手術後の腸管癒着やヘルニア嵌頓などにより引き起こされます。

表4 器質性便秘の原因疾患

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